余白-コトバの外側

白と黒の間に世界は無限に在る

2019-01-01から1年間の記事一覧

雨の名前

暦のうえでは大暑、あと十日程で秋の気が立つという季節の実際は、長梅雨がやっと開けて台風が待ち構えたようにやって来た。 本棚の隅に「雨の名前」という本があってはらはらとめくる。 白雨は夕立、俄雨。天泣は天気雨。 夏の暑さを鎮めるかの雨は涼雨、こ…

六月の温度

雨の匂いのする午前 部屋のあちこちに生まれる 仄昏いもあもあ 闇に育つ前のちいさな塊 なにか懐かしい 子どもの頃の風邪のおふとんの中 遊びつかれた夕暮れの帰り道 会った気がする 馴染んだ温度の ちいさな昏いもあもあ

真昼の月

冬の薄い空のたかみ 月が静かに佇む いつもそこにいたのか それとも夜の舞台裏が 思いがけず垣間見えたか 瓶覗の薄青の上に 白く刻印されたような 真昼の月