南の島の家に
波と風を描きたいと思った。
風は扉を開けてすぐの玄関に。
波は横たわり休む間に。
風は細い空気の動き
椰子の木にまとわり
島の記憶を運ぶ。
海岸に寄せる波が
風の中に
潮をのせる。
そんな筆の運びを想う。
山に守られて育ったわたしは
海をよく識らない。
山を越えて内陸に吹く風は
どこか滋養を湛えている。
島に来る風は
どこか肉を削ぎ落とした
晒さな音がするのではないか
椰子の葉を通り過ぎる時も。