余白-コトバの外側

白と黒の間に世界は無限に在る

調律

雑音に乱されたこころを ひとつずつ在るべき場所に戻していく 怒りは騒がしいことではなく それによってざわと動いたこと 指先は右脳に 眼差しは左脳に 肌の数ミリ上でとらえる感覚 左足の出し方右足の引き方 頂点は空につながって脊髄を中心に手足はまわる …

雨の名前

暦のうえでは大暑、あと十日程で秋の気が立つという季節の実際は、長梅雨がやっと開けて台風が待ち構えたようにやって来た。 本棚の隅に「雨の名前」という本があってはらはらとめくる。 白雨は夕立、俄雨。天泣は天気雨。 夏の暑さを鎮めるかの雨は涼雨、こ…

六月の温度

雨の匂いのする午前 部屋のあちこちに生まれる 仄昏いもあもあ 闇に育つ前のちいさな塊 なにか懐かしい 子どもの頃の風邪のおふとんの中 遊びつかれた夕暮れの帰り道 会った気がする 馴染んだ温度の ちいさな昏いもあもあ

真昼の月

冬の薄い空のたかみ 月が静かに佇む いつもそこにいたのか それとも夜の舞台裏が 思いがけず垣間見えたか 瓶覗の薄青の上に 白く刻印されたような 真昼の月

月の舟(蒼き森と月 挿入歌)

ほの蒼き空のしじまを 愛しいそなたを胸に抱いて そなたを見送る 森の梢が 悲しみの風にゆれている 行先は旅人しらず 白き月の小舟でゆこう どこまでも そなたを抱いて 天紅き時のゆうべに 愛しいそなたを胸に抱いて そなたを見送る 群れの小鳥が 弔いの歌を…

ゆめはいつも

合唱団アンサンブルAiさんの団歌のための作詞。白い襟ににブルーのリボン恋よりもおしゃべりが好き少女のころの雨の帰り道ぬれて藍にとける つゆ草の花花は歌う花は歌うゆめはまだ けむる霧のなか春の枝にさえずるカノン呼ぶ声もどこか不器用な草萌えて芽吹…

変態【蛹の中の幼虫は安らかなのか?】

青虫の眠りが覚めたらすでに華麗なる蝶なのだという夢を蛹の中のモノはみていないそのような約束を神はしない殻は柔らかすぎて鎧にはならないあやふや過ぎてゆりかごにもならないただ、閉じるという意思表示にすぎない 閉じた世界にも外界の音は明確に透けて…

過去は今日の影

今日と明日は昨日の結果ではなくて 過去は今によって様々な価値をつけられる。 過去は変えられないどころか 過去は常に意味を変える。 過去は今日の影のようなものだ。 だから、今日も歩こう。

すとんとスイッチが入った

夏の幕引きはイキナリであった。 秋はすとんと心の真ん中にやって来た。 雲の形がまだもこもこしていても 肌に触れる空気は秋だ。 秋は戦闘の季節で 出し尽くす季節で 走る季節だ。 今は前しかみない。 いろんな事は三ヶ月後にふり返ろう。

夏の明け方にみた長い夢

個展前のアトリエのように雑然と散らかった夢だったが、いくつか印象的な箇所があった。 またも美大に在学中という設定だ。 10代に戻ったわけではなく、今の私で、そして筆を探している。 広く近代的な校舎の中でMさんに会い、立体作品を作るという彼女にス…

目的地の途中の降りたことのない駅で次の電車を待つ間

風の森という名前の美術館に 行く時間をやっと見つけた。 展示会の予定が来週まで延びて 搬出の日が1週間延びたのだ。 3時間かかるというので 朝から遠足の気持ちで リュックサックに 心持ちうきうきを詰め込み 電車を乗り継ぐ。 初めて降りる駅のホームの…

椰子の木は唄う、南風は運ぶ。唄は滑らかな海をわたる。

南の島の家に 波と風を描きたいと思った。 風は扉を開けてすぐの玄関に。 波は横たわり休む間に。 風は細い空気の動き 椰子の木にまとわり 島の記憶を運ぶ。 海岸に寄せる波が 風の中に 潮をのせる。 そんな筆の運びを想う。 山に守られて育ったわたしは 海…

六月の青い水の底

ふたつの大きな出し物を終えて もう夏には何もしない。 ずっと水面でぷかぷか浮いていた 「やりたい事の泡」が ゆっくりと丸くなって 水の底に落ちていく。 すとんすとんと 綺麗な丸になって、しばらくそこで熟すのだ。 泡が「実になろう」と決まるのは 決意…

南の島の端っこに風の通る道をみつけに

走るときは 前を見ていないと 時々危ないわけなのだが 何かにぶつかったり 道を間違えたり そういう類の失敗について。 しかしながら ここ数ヶ月は 走りながら見ているのは前でも後ろでもなく 横でもなく 私自身のなかだ。 今走っている道と 私の中にあって …

時間が足りない夏に小さな別離をいくつか課す

にぎわいの家の蔵展示。 茶屋町のスロウデイ。 そこに割り込む沖縄のゲストハウス。 こんなことばかりしていたら 楽しすぎて破産しそうな予感、 今日 やることを選ぶべきという言葉をもらった そうなんだろうなと 少し前からわたしも どこかで気がついていた…

逃亡したいような四月

五月の準備をしつつ 六月のことを考え 四月の仕事が収まることに胃を痛める。 じゅうぶん 勤勉ではなかろうか。 緩急ない勤勉さだ。 家の中でくるくる時計が回っていく 時間が足りないことに 腹をたてるがその怒りに行き場はない。 気がついたら 桜は散って…

ひざをやわらかく曲げる四月

ここ数年ひかなかった風邪を、二月と四月に続けてひいた。風邪を理由に 花冷えの雨の日にぬくぬくと眠る。コップに溢れそうな水の底に膝をかかえて眠る。目覚めたら、薄暗がりの部屋は時間もわからないからまた眠る。魔法にかけられたように、眠っても眠って…

走りながらはじまった2017年と「いつかしの月」のこと

「いつかしの月」という物語を舞台の上に乗せた。歌とかたりの公演。そのことについてすこし書きたい。額田王のファンタジーは、ほんとうはSFとして書いていて、歌語りのメンバーとの話し合いで万葉をテーマにすると決まった時額田で書くしかできないだろう…

作りかえられた記憶とかつての約束と幸せの城について

しあわせ。 と不幸せ。 それを決めるのは自分だよと言えば、 それは諦めろとか、 高望みするなとか。 そう言うことなら違う。 しあわせは誰かにしてもらうものではなくて 自分が作り上げる城。

終わりであり始まりであること-風姿花伝-

終わった。 とても成しえそうになかったことが プロの手によって仕上げられていった。 その中に投げ入れられて、光栄でした。 そしてこの日、自分の世界がすこし動いた。ひとつ終わりそこからまたいくつもの縁が生まれる時々問う私は与えられているチャンス…

まぐろは泳ぎながら寝て、私は夢の中でもつくる。

綱渡りのようにぎりぎりのところで時間に間に合わせていくちよっとできた隙間にいろんなことが割り込んでくる 欲張りなのか下手くそなのか ただ 忙しいことを言い訳にするのは なんか負けたような気がして 体育会系なかんじで つくることをしてるとなんかぱ…

花火と金魚

郡山の夜が終わった。 夏休みの宿題を ひとつひとつ終えていく ちがうのは 終わったらまた 次の宿題が生まれること

何曜日だっけ

七月にはいり時間ができるどころかナイアガラのような勢いで時が垂直落下で流れていく仕事部屋にクーラーがないので汗も流れていくまだ夏は終わらない

夏のはじめの水の匂いと目的の定かではない遠泳

夏の手前のすこし長い夕暮れ水の匂いはどこかで降った雨を風が運んできたのかそれとも記憶の中のプールの匂いか同じことを繰り返す毎日がだいたい人生だとしたらいまは予測のつかない波の中ただ精一杯泳いでる金づちなんですけど奇跡的に泳げているどこにた…

巣にもどる六月

夏は墨が腐るので去年、ちいさな冷蔵庫を買った。 屋根裏の一番暑い私のアトリエ 私の巣。 四月と五月、飛び続けた翼を 休める六月 ほんとうに休めるかどうかは別として 出し尽くした・・・・ 巡業した・・・・ 描きたい。 巣にもどって描きたい。

生まれた町

木漏れ日の揺れる道 階段のコンクリから伸びる草 坂と信号 学園前をあるく 生まれた町 あやめ池小学校 伏見中学 一条高校 京都の短大 大阪の会社 いつも学園前はおかえりと 言っていた 近商ストア 1番はしっこの店は本屋さん パーラー プリンに憧れた 百楽 …

壁、また、壁、のクエスト消化中

子供の日 小さな草花が路地に咲く長屋のゲストハウスのお庭でゴンチチをかけながら小さなお花の絵を描いた空から光は溢れていて甘い白ワインを飲みながら人々はにこにこして 金色のお休みという名前にふさわしいよな一日。次の日いつのまにかメンバーに入っ…

脳内花園

どうも最近脳みそがラテンです

-the birthday- 夢のあとさき

印刷の変遷は 内側から見ると手工業から機械化をのぼりつめた後、デジタル化していった アートを 特殊な階級の人たちの元から町の人々が楽しむものへ 広めていったのは印刷だ。 ミュッシャからカッサンドラ。 大好きな作家たちはそこから出てきた。 Gデザイ…

黒に潜る

去年、にぎわいの家で展示した屏風を すこし我儘をいい なおしてもらいました やはり 縁がないほうがすき せっかくつけてくれたに ごめんなさい 黒の懐というタイトルで 描いたこの屏風は なんだか水の中に 潜るような風にみえる 私が 潜りたいからかな。